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2005年7月15日 (金)

物書きさんに20のお題 // 12.不規則★BL

人物設定;
主人公>>篤嗣(あつし)/男・20歳・大学生
相手>>鷹山田(たかやまだ)/男・19歳・フリーター

★ちょっとBLです★

 

 

■ただの幼馴染みのままがいいんだ■

 

 

 数学序論講究Aの講義中に、どこかの公衆電話から電話がきた。
 マナーモードにしていたので音は鳴らなかったけど、バイブレーションが5秒ほど続いて、僕は両隣の人から少し睨まれた。
 それから15分経って、講義が終わって直ぐに僕は廊下に出た。
 左脇に抱えたノートとテキストを落とさないように気を付けながら、ケータイの留守電に入れられた伝言を聞く。

 

『あーオレオレ。今日泊まりに行くからーじゃ』

 

「っんだよそれ!勝手に決めんなバカ!」
 廊下にたくさん人がいるにも関わらず、僕はケータイに向かって悪態をついた。
 伝言の主は、幼馴染みの鷹山田(たかやまだ)だった。家が近所というだけで、昔からつるんではいたけど、そう仲良くは無い。
 性格がまるっきり違うから。
 僕は見た目も中身も大人しい、絵に書いたようなA型の性格をしているけども、奴はまるっきり逆だ。
 子供の頃、1階にあった僕の部屋の窓から、奴はいつも無断で入ってきていた。そして無理やり窓から僕を連れ出した。
 奴は嫌がる僕の手を引いて外へ連れ周り、草野球のメンバーに入れたり、かくれんぼの鬼にしたり。毎日小さな怪我をして泣いて帰ってくる僕に、母は「もうあの子と遊ぶのは止めなさい」と言ってきたけども、奴は懲りずに僕の部屋に現れた。
 そんなわけで、僕が地元から離れた高校へ入学するまで、奴の嫌がらせは続いた。
 近所でなくなれば、もう関わらないで済むと思っていた。でも奴は、僕の住んでいた下宿まで毎週土日に乗り込んできた。はじめ、奴を泥棒かと思った下宿所のオバさんが警察を呼んだ事件を起こしながらも。
 だから大学は、もっと遠いところを選んだ。
 船か飛行機でしか来ることの出来ない、北海道へ。
 それでもなお、奴は何の前触れもなく現れた。
 高校の時のように、毎週土日ではなくなったにしろ、月に1度はやってきて、1泊か2泊していく。
 口うるさく、来るなら来ると連絡を入れろ!といった成果だろうか。今回が初めて、連絡が入った。当日だけど。
 とにかく、奴であろうと客人は客人だ。
 片付けられていない1人暮らしの部屋は、色々と恥ずかしい物が点在している。それを見られるのは嫌だ。
 僕は焦りを感じながら、ロッカーへ急いだ。

 

 

***

 

 

 僕が急いで自分の部屋に帰って、懸命に片付けたにもかかわらず、奴は日付が変わる2時間前になるまでウチに来なかった。
「よお篤嗣(あつし)、久しぶりー」
 明るい茶髪でガン黒に日焼けした奴は、白い歯を見せながらビニール袋に入った缶を俺に持たせた。
「それ、お土産。まあ飲もうや」
 袋の中は、6本のビール缶とつまみの袋が2つ。僕はムットした顔で、奴を睨み上げた。
「僕、お酒飲めないって言ってるだろ…」
「じゃあ俺が5本飲むから、お前は1本とつまみ食え。鮭とばはうまいぞー」
 それって僕のお土産じゃないじゃん!と思いながら、僕は袋を部屋の真ん中に置いてあるテーブルの上に並べた。
「今回はいつまでいる気?」
「明日の昼まで。明日は休むって言っていたのに、急に夜にバイト入っちゃってよー今日もギリギリ6時まで働いたのに。もしかして俺って、店長に愛されすぎ?」
「へー」
 奴の日常生活を、僕は詳しく知らない。
 月に1度話す内容で、地元の高校を卒業した奴は、高校からバイトをしていた店でフリーターになって、更にもう1つ別なバイトもしているっぽい。
 2つのバイトをするくらいなら、正社員で1つの職を全うした方が稼ぎがいいのに、と僕は思う。
「バイトなのに、よく毎月僕のところに来る余裕があるよね」
 テーブルの前に座って早速缶を開けている奴に、僕はつまみの袋を開けながらそう言った。
「まだスカイメイトが使えるから、どうにかな」
 奴は開けた缶を僕の前に置いて、もう1本の缶を自分用に開けた。
「まあ、乾杯しようや」
 差し出された缶に、僕はしぶしぶ自分の缶をくっつけた。
「無理して僕のところまで来て、何か良いことあるのかよ」
 1口だけ含んだビールを飲み込み、僕は口に広がった苦味に顔をしかめた。
「何ていうかー落ち着かないんだよな、お前がいないと」
 鮭とばというつまみを食べやすいように手で裂きながら、奴はさらっと言った。
「昔から俺の見えている風景にいつもお前がいたじゃん。だから癖かな、俺がお前に会いたいって思うのはさ」
 裂いたとばのいくつかを、奴は僕の前に置いて食べるように促した。
 ビーフジャーキーの鮭版のようなそれを、僕は1つ摘まんで、口の中に入れる。
「美味いだろ?」
 笑って言う奴に、僕は素直に頷き、もう1つ口の中に入れた。
「まあ気にすんなよ、細かいことはさ!」
 1本のとばを全部裂き終えた奴は、ビール缶を勢いよくあおって空にした。
「そういや、どうだ大学は?なんか楽しいことあったか?」
「いや、そんないつもと変わりないよ。そっちは?」
「それが聞いてくれよーこの間また店長からよくわからない説教されてよー」
 奴のバイト先での話と、僕の1人暮らしの話をしていると、時間はあっという間に経ってしまった。
 酒が入ると、奴はとても饒舌になる。でも意識はしっかりしていて、裂いてあったつまみが無くなればまた裂くし、僕の顔が赤くなったのに気付けば、水を飲むように促す。
 奴がお土産として持ってきた5本を全て飲みほすと、話題のキリもよく、外も白じんできたので寝ることになった。
 客用布団の無い僕の部屋では、狭い僕のベッドで背中合わせなって寝るのが恒例だ。
 壁側に僕が先に入って、トランクスだけの奴が落ちないように後から入ってくる。
「ちゃんと毛布被れてるか?」
「大丈夫だよ」
「そうか。じゃあおやすみ」
「おやすみ」
 僕の部屋の中で、僕と奴の呼吸音と時計の音が静かに、規則正しく鳴っている。それら音に耳を傾けながら、僕は目を閉じて眠りを待ったけど、なかなかそれはやってこない。
 奴の呼吸は数分で寝息に変わって、スースーとはっきりした音を鳴らす。
 眠りにつけない僕はベッドから上半身だけ起こし、気持ちよさ気に寝ている奴を睨んだ。
「僕は誰かと一緒だと寝られないんだよ、バカ」
 フーっと溜め息を吐いて、僕はもう1度ベッドに寝直した。無駄なことだとわかりつつも、羊の数なんて数えてみる。
「んーっ…」
 だが10頭も数えないうちに、いつもの困った事態が起こった。
 寝返りをうった奴が、ついでに僕の背に抱きいてきたのだ。
 僕は奴の両腕に腹と胸をがっちり押さえられ、耳のすぐ後ろの奴の寝息に動揺する。
 こうなってから毎回、僕は客用布団を買わなかった事を後悔するのだ。
 人の温かさに慣れていない僕は、不規則になった自分の呼吸と心拍を落ち着かせようと、できるだけ何も考えずに深呼吸をする。
 だけど耳のすぐ後ろから聞こえる奴の規則的な寝息のせいで、落ち着けられない。
 今回も、僕は眠れそうになかった。ただじっとして、奴を起こさないように朝を待つしかない。
 僕は固く目を閉じて、自分の不規則な呼吸と心音を押し殺そうとした。
 他意のないそれに、意味を付けたくなる過ちを犯さないためにも。

 

 

【end】

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