« 物書きさんに20のお題 // 01.ゆびきり | トップページ | 物書きさんに20のお題 // 03.世界を変える方法 »

2005年6月30日 (木)

物書きさんに20のお題 // 02.水たまり

人物設定;
主人公>>サッちん(男・小学校高学年)
主人公の友達>>ユウキ(男・小学校高学年)

 

 

 

■ボクの望まない世界を見る事■ 

 

 

雨の日は、好きじゃない。
水たまりがあるから。
逆さまになって歩く人や、ひっくり返った街並なんかが、そこに映るから。
普段は見えていないものが、見えてしまうから。

「サッちん、一緒に帰らんか?」

透明の傘を広げたユウキが、それをボクに向かって差し出した。

「傘、忘れたんっしょ?」
「いや、忘れてんよ」

ボクの傘は、ランドセルの中に入っている。天気予報を見た母さんが、朝に持たせたのだ。

「じゃあ、なんで傘をささん?」

不思議そうな顔をして、ユウキはボクの顔を覗く。
でもボクは、傘を広げる気にならなかった。
傘を広げれば、雨の中を歩かなくてはならなくなる。雨の中を歩けば、水たまりを見てしまう。

「なんでも。ボクはまだここにいるから、ユウキは先に帰んなよ」
「うーん…わかったわ」

納得はしていないようだが、ユウキはボクを誘うのを止めて、広げた傘を両手にしっかり持って雨の中に踏み出した。

「サッちん」

大きな水たまりを避けるように立って、ユウキがボクに振り返る。

「明日さ、晴れたらどっかで遊ばんか?」

空から絶えず降りそそぐ雨水は、ユウキの傘を嫌がるように滑り落ち、足元の大きな水たまりへ吸い込まれていく。

ボクは、水たまりに映っている、逆さまになったユウキを見た。
水面が騒がしいので、電波の悪いテレビのような映り方をしている。
でも、ユウキの頭から血が流れ、左腕と右足首が変な方向へ向いているのは、わかった。

「明日も、お前が生きてたらな」
「バーカ、生きてるって。じゃあなサッちん」
「ああ」

笑顔で手を振るユウキに、ボクは軽く手を上げた。
明日、ユウキの言う通りに晴れればいいと、ボクは思う。
でも、晴れたとしても、きっとユウキとは遊べない。
水たまりに映った事が本当にならなかった事は、今までに一度もなかったから。
陰鬱な気分が、背中のランドセルの重さを増幅させる。

ボクは身体を揺らしてランドセルを背負いなおし、目の前の世界を閉ざすように目を閉じた。

(どうか、ユウキに何も起こりませんように)

(明日は晴れて、ユウキと遊べますように)

ダメ元だけど、願わずにはいられない。

ボクは、雨の日に水たまりから見せられる先の世界なんて、これっぽっちも望んでいない。

何も見えなくていいのに。

水たまりの中の、澱んだ泥水だけ見えていればいいのに。

 

でも、ボクのそれに対する祈りはいつも虚しい。
すぐ近くで、車のブレーキ音と衝突音が聞こえた。

きっと明日は、ユウキと遊べない。

 

 
【end】

« 物書きさんに20のお題 // 01.ゆびきり | トップページ | 物書きさんに20のお題 // 03.世界を変える方法 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/114265/4767280

この記事へのトラックバック一覧です: 物書きさんに20のお題 // 02.水たまり:

« 物書きさんに20のお題 // 01.ゆびきり | トップページ | 物書きさんに20のお題 // 03.世界を変える方法 »

MY HOME

お役立ちサイト



  • ↑無料レンタルカウンター↑
無料ブログはココログ