トップページ | 物書きさんに20のお題 // 02.水たまり »

2005年6月29日 (水)

物書きさんに20のお題 // 01.ゆびきり

人物設定;
主人公>>ミヤコ(女・20歳)
主人公の幼馴染>>ユメ(男・20歳)

 

 

 

■子供の頃からの夢■

 

 

 

それはユメと私の、幼い頃からの約束だった。

『ハタチになったら、けっこんしよう』

お互いの細く短い指で交わしたゆびきり。
世界にはユメと私しかいなくて、ユメと私が結婚することは、太陽が東の海から昇るよりも、月が西の山に沈むよりも必然的なことだと思っていた。
やがて小学にあがり、中学生になって、高校生になって、大学生になって…
成人式の会場で再会したユメに、私は淡い期待を抱いていた。

 

「ユメ、久しぶり!」
「おー、ミヤコ。久しぶり元気だったか?」
「うん。ユメも元気だった?」
「ああ。元気元気」

 

少し色黒の顔に、白い歯が光るユメ。
小学では野球、中学高校ではサッカー部に入っていたため、日焼けした肌がもう元の白さに戻らないと、高3の夏に話していたことを思い出す。

 

「大学は、どう?」

 

空いた隣の席に座って、私はユメと向かい合った。
ユメが地元を出て、新幹線で2時間かかる遠い街の大学に通いはじめて、およそ2年。
高3まで親密だと思っていた連絡は、乾いた地面に落ちた雫のようにサッと消えて。
元より、私たちの間には何かを誓約する関係は結ばれていなかったのだけど。
ただ、幼い時に交わした、ゆびきりだけ。
あれだけしか、私のユメを繋ぐものは、今までずっと無かった。

 

「大学?ああ、結構忙しいけど、楽しいよ」

 

テーブルに肘を乗せて、ビールの入ったグラスを掴む。
その、左の手の指に、シルバーの指輪がはめられているのが見えた。

 

「勉強とか?」
「講義は、そんなかな?」
「サークルとか?」
「ああ、そうだな。かなり面白い」
「彼女とか?」
「ああ…」

 

ユメはチラリと自分の左手の指輪を見て、そして私に白い歯を見せた。

 

「うん。面白い」

 

 
期待していたわけじゃない。
だって、子供の時の約束だから。

 

そう自分に言い聞かせように、私は心の中で何度も何度も叫んだ。

 

適当にユメと会話を合わせて、相槌を打っていると、本来ユメに隣の席に座っていた人が戻ってきたので、私は自分のテーブルに戻らざるえなくなった。

 

「夏になったら遊びに来いよ、友達でも彼氏でも連れてさ」

 

笑って手を振るユメに、私は引きつった笑みで答えた。

 

彼氏なんて、いないのに。
ユメと約束をしてたから、ずっと私の中のその席は空けておいたのに。

 

私はその後ぽかんとしたまま、冷たい一人用の椅子に背もたれて、成人式の閉会の言葉を最後まで聞いた。

 

10代の終わり。

 

子供の終わり。

 

夢の終わりの成人式。

 

 
【end】

トップページ | 物書きさんに20のお題 // 02.水たまり »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/114265/4753883

この記事へのトラックバック一覧です: 物書きさんに20のお題 // 01.ゆびきり:

トップページ | 物書きさんに20のお題 // 02.水たまり »

MY HOME

お役立ちサイト



  • ↑無料レンタルカウンター↑
無料ブログはココログ